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不死身の特攻兵 感想

不死身の特攻兵 感想

日大アメフト部の20歳の若い守備選手が実名顔出しで卑劣な反則指示に盲従し関西学院大選手を負傷させた反省を告白した記者会見を見て。

日大アメフト 悪質反則タックル問題 は日本が抱える持病の象徴?

時は1944年後半の第二次世界末期。アメリカ軍のB29爆撃機の大編隊による日本本土空襲が始まる少し前。南方フィリピン・レイテ戦。日本陸軍で99双発軽爆撃機による初めての特攻隊が結成されました。その特攻機を操縦する若き特攻兵(21歳の伍長)の壮絶な生き様を描いた著書”不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか”が読みたくなって読みたくなって図書館になくて購入してやっと読み終えました。
(※ 講談社現代新書 2451 鴻上尚史著)

 

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不死身の特攻兵 感想

 

>> 不死身の特攻兵

 

きっかけは 日大アメフト 悪質反則タックル問題

2018年5月25日発行の日本経済新聞の表紙、春秋で紹介された日大アメフト悪質反則タックル問題。日大アメフト部20歳の若い守備選手が実名顔出しで記者会見を開き告白する。

「卑劣な反則指示に盲従し、関西学院大アメフト部の選手を負傷させた事への反省。」記者会見の後に新聞が引用する。太平洋戦争末期、特攻隊として9回出撃し航空兵のドキュメント本「不死身の特公平」を引き合いにして、

「21歳の若者が、絶対的権力を持つ上官の命令に背いて生き延びたのはどんなに凄い事か」

日大アメフト悪質反則タックル問題は日本が抱える持病の象徴と書かれていたのです。

(※2018/05/25 日本経済新聞 春秋より)

死の命令に意味はあるのか

”不死身の特攻兵”に書かれていた内容です。若き特攻兵は 爆弾抱えた双発の爆撃機で出撃します。でも軍司令部の「体当たり攻撃をせよ」との命令を無視して生還します。軍司令部は怒り、若き特攻兵を死ぬまで出撃させます。9回も繰り返させます。 

特攻兵 「死ななくても良いと思います。死ぬまで何度でも行って爆弾を命中させます。」

司令官 「貴様、それほど命が惜しいのか、腰抜けめ!

特攻兵 「お言葉を返すようですが、死ぬばかりが能ではなく、より多く敵に損害を与えるのが任務だと思います。」

司令官 「馬鹿もん!、それは言い訳にすぎん。死んで来いと言ったら死んでくるんだ!」

(※”不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか” 講談社現代新書 2451 鴻上尚史著 より)

 

日本陸軍の命令は絶対です。末端の兵士は反論する事も、意見を述べる事もましてや反抗する事も許されません。反抗すれば命令違反の戦犯扱い、そうなれば家族親類縁者が苦境に立たされます。そんな戦時下の状況にあって不死身の特攻兵は何故反抗したのでしょう。

 

特攻の意外な実態

 ”不死身の特攻兵”を読み進めると意外な事実を知る事になりました。戦争を知らないで育った私達が特攻に抱くイメージと言えば神風特攻隊永遠のゼロなどで描かれている愛国心の強い勇者を思い描きます。

 国の為、愛する人の為に命を散らして敵の戦艦や空母に体当たり攻撃で撃沈する。大和魂と言うのでしょうか。その精神性は今の日本にも脈々と生きていてサムライジャパンとか私達日本人の自信や誇り。そう思う人は少なからずいるでしょう。

特攻は無力

ところが”不死身の特攻兵”は特攻は無力な戦法だったと語ります。確かに初期に行われた特攻では艦船に損傷を与える効果がありました。日本軍は特攻機一機で戦艦や空母を一隻撃沈出来ると思い込みました。

でもアメリカ軍はすぐに防衛策を講じ、レーダーと迎撃機、対空砲火で特攻機を迎え撃ち、殆どが撃墜されたのだそうです。奇跡的に防空攻撃をかい潜って体当たりできたとしても戦艦や空母の甲板は固い鋼鉄で覆われており、「コンクリートに生卵をぶつける様なもの」だったのだとか。

日本軍の航空隊、現場の指揮官はその事を知っていました。ですから現場の指揮官達は体当たり攻撃ではなく、確実に爆弾を命中させて生還する戦法を進言します。日本国を守る為に。現場の指揮官は特攻作戦を見直すよう進言します。でも・・・・

海軍特攻隊の准士官 「本日の攻撃において、爆弾を百%命中させる自信があります。命中させた場合、生還してもよろしゅうございますか。」

海軍中将 「まかりならぬ」

 

※ 空母零戦隊 岩井勉著 今日の話題社 より

司令部は現場の意見を取り上げません。次々と特攻隊を編成し出撃命令を出します。志願ではなく指名で否応なくだったようです。
特攻の現実は大した戦果は上がらりません。せいぜい装備脆弱な小型船を損傷する程度でした。でも特攻隊の戦果はよく確認する事ができなかったので誤った報告がが多かったそうです。

日本人、日本軍に騙される。

「敵戦艦撃沈!」、「敵空母大破!」

日本本土の天皇や国民には特攻の大戦果が報じられます。特攻兵は「軍神」、「英霊」と称えられ、日本中の国民に「後に続け」と戦意が高揚します。特攻隊が敵の戦艦や空母を撃沈するのだから、日本は戦争に負けない。そう信じられて生きました。

しかしアメリカ軍機動部隊の損傷は少なく、戦地では次々と敗戦、玉砕、日本本土にB29爆撃機の大編隊が襲来する事態を防ぎきれないでいました。

あの時代に子供だった人達が語っています。「特攻隊が敵機動部隊を撃沈しているのに何故疎開しなければならないのか?」、本当の戦況など誰にも知らされないので不思議だったそうです。

特攻とは軍の指導者が戦に勝つため国を守るための組織的な努力や検討、科学的研究を放棄して「壮絶」、「名誉」、「旺盛なる責任観念」、「任務に邁進」などという責任感を満足させるためだけの作戦なのだと。

ぞっとしました。どうしてそんな実態がちゃんと知らされなかったのでしょう、戦争が終わった後でも。そして戦後70年もたった21世紀の今の社会、チームや組織の在り方に何と当てはまる事でしょう。

軍神と言われた21歳青年は普通の人

不死身の特攻兵の話に戻ります。

死ぬな!

特攻隊の隊長は、「特攻こそ国を救う」と妄信する軍の上層部に強く反抗し、若き特攻兵に「死ぬな」、「爆撃して生還せよ」と命じます。
しかし隊長は特攻で出撃する前に戦死してしまいます。他の将校も仲間の航空兵も殆どが行方不明や戦死などでいなくなって特攻兵は孤立します。そこに軍の司令官から特攻命令が下されます。

「一機でも出撃せよ。」

特攻兵は信頼していた隊長の遺命を守り 「間違った命令」に反抗するかのように特攻隊で出撃しても、爆撃と生還を繰り返えします。

最初、私は実在の主人公が物凄い気骨のある男かと思いました。でも違いました、不死身の特攻兵は飛行機の操縦技術が長けている事を除けば極普通の青年でした。そもそも彼は軍人出身ではありません。航空便のパイロット出身で徴兵された民間人です。

「空を飛ぶことが好き。」

ただ飛んでいるだけで幸せ、でも操縦技術はベテラン航空兵に負けない。そんな普通の人でした。

作戦参謀 「敵艦撃沈の大戦果を爆撃ではなく体当たり攻撃によってあげるのだ。」

特攻兵「死ななくても良いと思います。死ぬまで何度でも行って爆弾を命中させます。」

司令官「貴様、それほど命が惜しいのか、腰抜けめ!」

特攻兵「お言葉を返すようですが、死ぬばかりが能ではなく、より多く敵に損害を与えるのが任務だと思います。」

司令官「馬鹿もん! それは言い訳にすぎん。死んで来いと言ったら死んでくるんだ!

特攻兵「ネグロスから帰ったばかりですし、体の調子も悪くて、空中勤務に耐えられそうにありませんから、休ませてください。」

参謀長「いかん! 絶対に許さんぞ! すぐに。鉄心隊について出発しろ。目標はレイテ湾の艦船だ。船はどれでもいい。見つけ次第、突っ込め。今度帰ったら、承知せんぞ。」

参謀長「この臆病者!よく、のめのめと帰ってきたな。貴様は出発の時になんと言われたか覚えているか!」

参謀長「レイテ湾には、敵戦艦がたくさんいたんだ。弾(爆弾)を落としたらすぐ体当たりをしろ。出発前にそう言ったはずだ。」

参謀長「貴様は名誉ある特攻隊だ。弾(爆弾)を落として帰るだけなら、特攻隊でなくてもいいんだ。貴様は特攻隊なのに、ふらふら帰ってくる。貴様は何故死なんのだ。

参謀長「弁解などするな!それより明日にでも出撃したら絶対に帰ってくるな。必ず死んでこい!

(※ 不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか 講談社現代新書 2451 鴻上尚史著)

日本が抱える持病

日本は復興し敗戦は遠い昔の思い出となりました。勿論私も戦後生まれです。戦争体験のある親族や知り合いから戦争当時の話を尋ねた事ががあります。でも本当に大変な思いをした人は当時の事を殆ど語ろうとはしません。語らずして他界していきます。

今の日本は”敗戦”から何かを学べたのでしょうか?。

今日の日本、会社でも職場でも学校でもスポーツクラブでもその有り様は如何でしょうか。

達成不能な経営目標を掲げて、合理的で有効な策を取らず現場に過酷なノルマを強要する。当然、目標は達成できない。トップは現場の指揮官に粉飾決済を強要する。日本を代表する大手電機メーカーで続けられてきた事です。

達成不能な経営目標を掲げて、合理的で有効な策を取らず、現場に過酷なノルマを強要する。当然、目標は達成できない。トップは現場の指揮官に粉飾決済を強要する。日本を代表する大手電機メーカーで続けられてきた事です。

森友学園への国有地売却をめぐる決算文書改善問題では検察が不起訴処分を決定。財務省は関係者の処分を発表して決着をつけた形になった。でも根本である”国有地大幅値引き売却の闇”は何も解明されていません。

パワハラ、セクハラ、モラハラ 従業員への過剰労働や休日出勤 長期残業の強要。相手が自殺するまでエスカレートする虐め。これらは厳しく諫められているはずです、起きないはずです。しかし私の元には休日返上で遅くまで働いている人達。上司のパワハラ、セクハラに苦しめられている人達。無理難題を押し付けられたり不祥事の責任を取らされて辞めさせられる人達の話が寄せられます。

こんな事がいつまで続くのでしょう。私達は変われないのでしょうか?

日大アメフト 守備選手の告発は社会の変化の兆し?

日大アメフト 悪質反則タックル問題で20歳の若い守備選手が自分の意志で 実名顔出しで卑劣な反則指示に盲従し関西大選手を負傷させた反省を告白した記者会見を行った事はこれからの社会を大きく変えるかもしれない変化の兆しではないでしょうか。

私達は現場で働くものは 強くならなければならない、間違った事には勇気をもって抗わなければならない。間違った指示、命令に従えば例え問題が起きて責任を全て被ったとしても社会の在り方を歪め同僚や後輩、未来を担う子供達にまで類が及ぶのですから。

どうしてもそういう生き方が出来ない人は少なくはないでしょう。でもせめて未来の担い手を潰さないで欲しい。勇気ある行動を起こす人達を応援し守って欲しい。それが私達が長年抱えてきた持病を解消する方法ではないでしょうか。

私達、現場で働く者達は強くならなければなりません。強くなると言っても腕力をふるったり口喧嘩で相手をねじ伏せる強さではありません。

理不尽な仕打ちがあってもグッと耐える強さです。意味がない価値がない不合理な命令、社会の仕組みを歪めてしまう。すぐには発覚しなくても誰かにとんでもない不合理な命令を強要されても、拒否する強さ、不合理さを世に知らしめる強さです。